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第27章 幼馴染の本音

12月に入り、街はクリスマスムードに包まれていた。

「悠真、今年のクリスマスどうする?」

美月が期待に満ちた目で聞いてくる。

「そうだな……どこか行く?」

「うーん」

美月が考え込む。

放課後の教室で、二人きり。

みんな部活や塾に行ってしまった。

「実は、おばあちゃんがね」

「ん?」

「クリスマスは実家に帰るって」

「え?」

「だから、24日は家に一人なの」

美月が恥ずかしそうに俯く。

つまり、二人きりで過ごせるということか。

「じゃあ、美月の家で過ごそう」

「いいの?」

「もちろん」

美月が嬉しそうに微笑む。

でも、すぐに真剣な表情になった。

「ねえ悠真」

「なに?」

「私、ずっと言いたいことがあるの」

「言いたいこと?」

美月が深呼吸する。

「私ね、悠真のこと、もっと知りたい」

「知りたい?」

「うん。10年以上一緒にいるのに、知らないことがたくさんある」

確かに、そうかもしれない。

「例えば?」

「悠真の将来の夢とか」

「将来の夢……」

「大学はどこに行きたいとか」

「それは——」

正直、深く考えたことがなかった。

美月といられれば、それでいいと思っていた。

「私も、ちゃんと考えてなかった」

美月が続ける。

「でも、最近思うの」

「何を?」

「このままじゃダメだって」

美月の表情が真剣だ。

「私たち、お互いに依存してる」

「依存?」

「悠真は私がいればいいって思ってる」

「それは——」

否定できない。

「私も同じ」

美月が苦笑する。

「悠真がいれば、他は何もいらないって」

「それの何が悪いの?」

「悪くはない。でも——」

美月が俺の手を取る。

「もっと強くなりたい」

「強く?」

「一人でも立っていられる強さ」

「でも、一人になる必要なんて——」

「そうじゃなくて」

美月が首を振る。

「お互いに自立した上で、一緒にいたい」

なるほど。

美月の言いたいことが分かってきた。

「だから、将来のことも考えたい」

「そうだな」

「悠真の夢を聞きたい」

「俺の夢……」

考える。

ゲームが好き。

写真も楽しい。

でも、仕事にしたいかと言われると——

「まだ分からない」

「私も」

美月が微笑む。

「でも、一緒に探そう」

「うん」

「お互いの夢を」

手を握り合う。

これが、美月の本音。

ただ一緒にいるだけじゃなく、お互いに成長したい。

「美月」

「なに?」

「俺、美月のそういうところが好き」

「そういうところ?」

「前向きで、真剣で」

「照れる」

美月が顔を赤らめる。

「でも、私は——」

「ん?」

「悠真の全部が好き」

「全部?」

「ゲーム好きなところも」

「うん」

「優柔不断なところも」

「それは褒めてない」

「でも好き」

美月が俺に寄りかかる。

「だから、一緒に成長したい」

「俺も」

「約束?」

「約束」

また小指を絡める。

でも、今度の約束は少し違う。

ただ一緒にいるだけじゃない。

一緒に成長する約束。

「そういえば」

美月が顔を上げる。

「クリスマス、何食べる?」

「美月の手料理?」

「頑張る!」

「楽しみ」

「ケーキも作る」

「本格的だな」

「だって、特別な日だもん」

特別な日。

二人で過ごす、初めてのクリスマス。

「プレゼントは?」

「内緒」

「ヒントは?」

「ダメ」

美月がいたずらっぽく笑う。

こんなやり取りも楽しい。

でも、美月の本音を聞けて良かった。

依存じゃなく、自立。

それが、本当の愛なのかもしれない。

幼馴染の本音。

それは時に、厳しい現実を突きつける。

でも、だからこそ価値がある。

美月と一緒に、成長していこう。

それが、俺たちの新しい約束。