第29章 告白という名のラスボス
年が明けて、1月。
受験シーズンが本格的に始まった。
「悠真、志望校決めた?」
美月が心配そうに聞いてくる。
「一応」
「一応って?」
「地元の大学」
「私も」
同じ大学を目指すことにした。
離れたくないから。
でも、それだけじゃない。
ちゃんと将来のことも考えて、選んだ。
「頑張ろうね」
「うん」
図書室で一緒に勉強。
最近は、これが日課になっている。
「ねえ悠真」
「勉強中」
「ちょっとだけ」
「なに?」
美月が真剣な顔をしている。
「私たち、付き合ってもうすぐ1年だよね」
「そうだな」
去年の4月に告白して、もう1月。
時間が経つのは早い。
「でも、私、まだ言ってないことがある」
「言ってないこと?」
美月が俯く。
「悠真は、ちゃんと告白してくれた」
「うん」
「でも、私、流されるままで」
「え?」
「ちゃんと、言葉にしてない」
そういえば、そうかもしれない。
あの時、美月は「お願いします」と言っただけ。
「今更だけど」
美月が顔を上げる。
目が潤んでいる。
「言わせて」
「美月……」
「神崎悠真くん」
フルネームで呼ばれる。
「私、白河美月は」
深呼吸。
「あなたのことが、大好きです」
図書室に、美月の声が響く。
「小学2年生で出会って」
美月が続ける。
「最初は、変な男の子だなって思った」
「変って」
「だって、いきなりゲームの話始めるんだもん」
「それは……」
「でも、面白かった」
美月が微笑む。
「転校してきて不安だった私に、一生懸命話しかけてくれて」
「美月が寂しそうだったから」
「それから、ずっと一緒」
「うん」
「楽しいことも、悲しいことも、全部一緒に経験してきた」
美月の目から、涙が一粒こぼれる。
「いつの間にか、悠真がいない人生なんて考えられなくなってた」
「俺も同じ」
「だから」
美月が俺の手を握る。
「改めて、告白させて」
「うん」
「大好き。愛してる」
「俺も愛してる」
「これからも、ずっと一緒にいて」
「もちろん」
「何があっても、離れないで」
「離れない」
「約束」
「約束」
美月が泣きながら笑う。
俺も、目が潤んでいた。
これが、美月からの告白。
1年遅れの、でも心のこもった告白。
ゲームで言えば、ラスボス戦。
最後の最後に待っている、最大の山場。
でも、これは戦いじゃない。
お互いの想いを、改めて確認する儀式。
「ありがとう、美月」
「私の方こそ、ありがとう」
「これで、対等?」
「うん、対等」
二人で笑い合う。
周りの視線を感じる。
図書室で告白は、さすがに目立つ。
「恥ずかしい」
「今更」
「でも、言えて良かった」
「俺も聞けて良かった」
手を繋いだまま、勉強を再開する。
でも、全然集中できない。
幸せすぎて。
告白という名のラスボス。
それは、倒すものじゃない。
受け入れて、共に歩むもの。
美月の告白を胸に、俺は誓う。
この先、何があっても。
美月を守り、愛し続けることを。
それが、俺の答えだ。