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第31章 エピローグへの道

大学生になって、半年。

キャンパスライフにも慣れてきた頃。

「悠真、今日のゼミどうだった?」

「まあまあかな。美月は?」

「楽しかった!」

大学の食堂で、一緒にランチ。

高校の時と変わらない日常。

でも、少しずつ変化もある。

「そういえば」

美月が切り出す。

「来月、お母さんたち帰ってくるんだって」

「本当?」

「うん、一時帰国」

美月の両親は、まだ海外にいる。

でも、定期的に帰ってきてくれる。

「会うの?」

「もちろん。悠真も一緒に」

「俺も?」

「当たり前でしょ」

美月が笑う。

「家族なんだから」

家族。

その言葉が嬉しい。

「分かった」

「お父さん、悠真に会うの楽しみにしてるって」

「プレッシャーだな」

「大丈夫、もう認められてるから」

そうだといいけど。

講義が終わって、図書館へ。

相変わらず、一緒に勉強している。

「ねえ悠真」

「また話?」

「ちょっとだけ」

「何?」

「将来のこと、考えてる?」

また、この話題。

でも、前とは違う。

「考えてる」

「本当?」

「写真関係の仕事がしたい」

「いいね!」

美月が嬉しそうにする。

「美月は?」

「私は、編集の仕事」

「編集?」

「本を作る仕事」

「へー、意外」

「そう?」

「でも、美月らしい」

お互いの夢が、少しずつ形になってきている。

「もし」

美月が続ける。

「違う道に進んでも」

「ん?」

「一緒にいてくれる?」

「当たり前」

即答する。

「仕事は仕事、プライベートは別」

「そうだよね」

「心配しすぎ」

「だって」

美月が俺の手を握る。

「大切だから」

「俺も大切」

図書館で手を繋ぐ。

周りの目は、もう気にならない。

夕方、美月のアパートへ。

そう、美月は一人暮らしを始めた。

おばあちゃんの家から、大学の近くに。

「お邪魔します」

「どうぞ」

狭いワンルームだけど、美月らしい部屋。

「お茶入れるね」

「ありがとう」

ペアのマグカップで、お茶を飲む。

クリスマスのプレゼント、大切に使ってくれている。

「そういえば」

俺が切り出す。

「来年のこと」

「来年?」

「就活」

「あー」

美月が憂鬱そうな顔をする。

「まだ先だよ」

「でも、すぐ来る」

「そうだね」

「一緒に頑張ろう」

「うん」

未来の話。

不安もあるけど、希望もある。

「でも、悠真」

「なに?」

「どんな未来でも」

美月が俺を見つめる。

「一緒なら大丈夫」

「そうだな」

「だって、今まで乗り越えてきたし」

「これからも乗り越える」

「約束」

「約束」

お決まりのやり取り。

でも、飽きない。

エピローグへの道。

それは、まだ長い。

でも、焦る必要はない。

一歩ずつ、確実に進んでいけばいい。

美月と一緒に。

「あ、そろそろ帰る」

「もう?」

「明日、1限あるし」

「そっか」

美月が玄関まで送ってくれる。

「じゃあね」

「うん」

別れ際のキス。

もう慣れたもの。

「愛してる」

「私も」

「また明日」

「また明日」

アパートを出て、夜道を歩く。

エピローグはまだ先。

でも、その道のりも楽しい。

だって、美月がいるから。

それだけで、十分幸せだ。