第33章 そして日常は続く
社会人1年目の夏。
朝、スマホのアラームで目が覚める。
「おはよう、悠真」
隣で美月も目を覚ます。
そう、俺たちは結婚した。
大学卒業と同時に入籍。
今は小さなアパートで二人暮らし。
「おはよう」
「今日も仕事?」
「当たり前だろ」
「私も」
でも、布団から出たくない。
もう少し、美月の温もりを感じていたい。
「悠真、遅刻するよ」
「あと5分」
「もう」
美月が苦笑する。
でも、美月も動かない。
結局、ギリギリまで布団の中。
これも、日常。
朝食を食べながら、今日の予定を確認。
「今日、残業ある?」
「多分ない」
「じゃあ、一緒に夕飯食べられる」
「楽しみ」
ペアのマグカップでコーヒーを飲む。
あのクリスマスのプレゼント、まだ使っている。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
玄関でキス。
朝の儀式。
それぞれの職場へ向かう。
仕事は大変だけど、充実している。
俺は写真スタジオで、少しずつ腕を磨いている。
美月は出版社で、編集の仕事を頑張っている。
昼休み、美月からLINE。
『お昼何食べた?』
『コンビニ弁当』
『栄養偏るよ』
『美月は?』
『手作り弁当!』
『いいな』
『明日、悠真の分も作る』
『本当?』
『もちろん』
こんなやり取りも、幸せ。
仕事が終わって、家に帰る。
美月はまだ帰っていない。
先に夕飯の準備を始める。
最近、料理も覚えた。
美月に教わりながら。
「ただいま〜」
美月が帰ってきた。
「おかえり」
「あ、料理してる」
「簡単なものだけど」
「嬉しい」
二人で夕飯を食べる。
今日あった出来事を話し合う。
「そういえば」
美月が切り出す。
「琴音から連絡があった」
「久しぶりだな」
「来月、結婚するんだって」
「おお、おめでたい」
「式に呼ばれた」
「行こう」
友達の幸せは、自分たちの幸せ。
食後、ソファでくつろぐ。
美月が俺にもたれかかる。
「ねえ悠真」
「ん?」
「幸せ?」
「幸せだよ」
「私も」
「なんで急に?」
「ふと思って」
美月が続ける。
「こんな普通の日常が、すごく幸せだなって」
「分かる」
「ゲームみたいな展開はないけど」
「いらない」
「だよね」
二人で笑う。
テレビを見ながら、のんびり過ごす。
明日も仕事。
明後日も。
でも、それでいい。
美月がいる日常。
それが、一番の幸せ。
「そろそろ寝る?」
「そうだね」
ベッドに入る。
美月が俺の腕に収まる。
「おやすみ、悠真」
「おやすみ、美月」
「愛してる」
「俺も愛してる」
電気を消す。
暗闇の中、美月の温もりを感じる。
これが、俺たちの日常。
特別じゃない、普通の毎日。
でも、かけがえのない毎日。
そして——
この日常は、これからも続いていく。
ゲームならここでスタッフロール。
『THE END』の文字が表示される。
でも、現実に終わりはない。
明日も、明後日も、俺たちの物語は続く。
俺のラブコメは、こんなはずじゃなかった。
もっとドラマチックで、もっと劇的で、もっとゲームみたいになるはずだった。
でも——
こんな風になって、本当に良かった。
美月と出会えて、恋をして、結ばれて。
そして、ずっと一緒にいられる。
これ以上の幸せは、ない。
美月の寝息を聞きながら、俺も眠りにつく。
明日も、きっといい日になる。
美月がいるから。
それだけで、十分だ。
俺のラブコメは、最高にハッピーエンドだった。
いや、エンドじゃない。
これからも、ずっと続いていく。
美月と二人で、幸せな日常を積み重ねながら。
それが、俺たちの選んだ道。
後悔なんて、一つもない。
そして日常は続く。
永遠に。