えらぶ、まとめる
「ねこ」か「いぬ」か
レッスン2の [ ] は、候補を並べられる便利な道具でした。ただし入れられるのは1文字の候補だけです。「ねこ」か「いぬ」——ことば単位の「どれか」は、[ ] では書けません。
そのための記号が |(縦棒)です。ねこ|いぬ は「『ねこ』か『いぬ』の、どちらか」という意味になります。
うちには、ねこといぬがいます。
「ねこ」と「いぬ」の2か所が塗られました。ためしにもようを [ねこいぬ] に書きかえると、「ね」「こ」「い」「ぬ」「い」と5か所、1文字ずつバラバラに塗られます。[ ] の候補はあくまで1文字、| の候補はことばごと——この違いが今日の出発点です。
候補は2つに限りません。ねこ|いぬ|うさぎ のように、| でいくつでもつなげられます。
| は、ぜんぶを割る
新しい記号には、新しい落とし穴があります。「本文がはじまりからおわりまで『ねこ』か『いぬ』そのものか、確かめたい」と思って、レッスン4のしるしと組み合わせ、^ねこ|いぬ$ と書いたとします。
ねこのてもかりたい本文は「ねこ」そのものではないのに、頭の「ねこ」が塗られてしまいました。本文を しばいぬ にすると、こんどはしっぽの「いぬ」が塗られます。
なぜでしょうか。くりかえしの記号が直前の1文字にしか効かなかったのとは正反対に、| の効き目はもよう全体に及びます。^ねこ|いぬ$ は「^ねこ」か「いぬ$」のどちらか——もようが、| のところでまるごと左右に割られているのです。
( ) で、範囲を決める
日本語の「黒いねこといぬ」を思い出してください。黒いのはねこだけなのか、いぬもなのか——話しことばでは曖昧なままでも、聞き手が文脈で察してくれます。
もようの読み手は、察してくれません。かわりに「くりかえしは直前の1文字だけ、| はぜんぶ」という決まりで、機械的に読みます。そして、決まりのままでは困るとき、( )(丸かっこ)で効き目の範囲をこちらから指定できます。
上の実験室で、もようを ^(ねこ|いぬ)$ に直してみてください。「ねこのてもかりたい」にも「しばいぬ」にも、もう当てはまりません。本文を ねこ だけにすると、まるごと塗られます。
(ねこ|いぬ) と囲んだことで、| が割るのはかっこの中だけになりました。^ と $ は、外から全体をはさめるようになったわけです。
くりかえしの相手を、まとめる
( ) には、もうひとつ大事な出番があります。犬の鳴き声「わんわんわん」を、ひとつづきでつかまえたいとします。「わん」のくりかえしだから わん+——そう書きたくなりますが。
わんわんわん、わんんん。
当てはまったのは4か所です。「わんわんわん」は「わん」「わん」「わん」と3切れに分かれ、かわりに「わんんん」がまるごと塗られています。+ の相手は直前の1文字「ん」だけ——わん+ は「『わ』のあとに『ん』が1個以上」、つまり「わんんん」のほうのもようだったのです。
もようを (わん)+ に書きかえてみてください。こんどは2か所で、「わんわんわん」がひとかたまりで塗られ、「わんんん」は頭の「わん」までしか取られません。( ) でまとめたものは、くりかえしの記号からも1個のまとまりとして扱われます。
道具箱が、そろいました
ここまでに手に入れた道具を並べます。
- 文字そのもの——並べたとおりの文字に当てはまる(レッスン1)
.と[ ]——1文字ぶんの「なんでも」と「候補のどれか」(レッスン2)*+?——直前のまとまりのくりかえし(レッスン3)^と$——はじまりとおわりのしるし(レッスン4)|と( )——ことば単位の「どれか」と、効き目の範囲(このレッスン)
ことばの「かたち」を言い当てるための語彙は、これでそろいました。のこりのレッスンでは、この小さな言語の中身(どうやってこんなに速くさがしているのか)、限界(どうしても言えないかたち)、そして実践(暮らしの中のもよう)を見ていきます。
✎ 演習:鳴き声をつかまえる
実験室の本文を わんわんとほえ、にゃーにゃーとなく。 にして、「わんわん」と「にゃーにゃー」をそれぞれひとかたまりで——つまり、ちょうど2か所だけ——塗るもようを考えてください。
- まず
わん+|にゃー+で試して、何か所になるか観察する ( )を足して、2か所になるように直す
ヒント1(考え方)
わん+|にゃー+ は4か所になります。くりかえしたいのは「ん」や「ー」という1文字ではなく、「わん」「にゃー」というまとまりです。
こたえ
(わん)+|(にゃー)+ で、「わんわん」と「にゃーにゃー」の2か所だけが塗られます。じつは (わん|にゃー)+ でも同じ2か所になります——ただしこちらは「わんにゃーわん」のような、混ざった鳴き声にもまるごと当てはまります。そんな鳴き方をする生きものをさがしたいかどうかで、選んでください。
このレッスンで分かったこと
|はことば単位の「どれか」。1文字の候補[ ]と使い分ける|の効き目はもよう全体に及ぶ——^ねこ|いぬ$は「^ねこ」か「いぬ$」に割れてしまう( )は意味を変えずに範囲を決める——^(ねこ|いぬ)$- くりかえしの記号は、
( )のまとまりを1個として数える——(わん)+とわん+は別物 - 5つの道具がそろい、もようの語彙はこれで完成